人にはそれぞれ、些細なことから大きなものまで様々な課題が存在します。
その課題を克服したり、目標を達成したりしながら、より良い幸せな人生を求めて
生きています。
そんな皆様へお勧めしたい本をご紹介いたします。
「寂聴 九十七歳の遺言」 著者:瀬戸内寂聴 氏
2021年12月9日に心不全のため99歳で亡くなった作家で僧侶の瀬戸内寂聴さん。
自立する新たな女性の生き方を作品で生き生きと描きながら、各地で行う法話では弱者に
寄り添い、愛することの大切さを説いてきました。
老いと病を乗り越え、活動を続けたエネルギーの源とは何だったのでしょうか。
そこには若き日に体験した戦争と、幼い娘を捨てて家を出たことへの深い悔いがあった
そうです。
34歳で文壇デビューした瀬戸内さん。
その人生は波乱に満ちたものでした。
夫と幼い娘を捨てたことに批判を浴びながらも、400を超える本を執筆。
その後、得度し、各地で法話を行って心に傷を抱える人たちに寄り添ってきました。
今回は、寂聴さんの死を悼み、この本を手に取りました。
人間が生きるとは、どういうことでしょうか。
この年まで生きてきてはっきり言えるのは、それは「愛する」ことです。
誰かを愛する。
そのために人間は生きているのです。
誰も愛さないで死んでいく人は、ほんとうに可哀そうだと思います。
結婚するとかしないとか、それは全く関係ない。
誰か一人でも愛する人にめぐりあう。
それが一番、私たちが生きたいという証になるでしょう。
小説家として5百冊近くも本を出しました。
様々な賞もたくさんもらいました。
でも、そんなものよりも私の中に今も深く残っているのは、愛した人の思い出なのです。
この年になるまで、好きなことを好きなようにして生きてきました。
自分のしたいことは何でもして生きてきました。
心残りは全くありません。
そして、この年になってようやくわかりましたが、愛することは許すことです。
ほんとに愛したら、何でも許せます。
愛とは、自分以外の人の心を想像し、その願いや望みを叶えてあげたいというやさしさ、
思いやりです。
お釈迦様は最期に、弟子のアーナンダにこう言われました。
「アーナンダよ、泣くな、悲しむな、嘆くな、私は常に説いてきたではないか、すべての愛するもの、好むものは必ず別れる時が来ると、遭うは別れの始まりだと、およそ生じたもの、
存在したものは、必ず破壊されるものだということを、これらの理が破られること
はないのだ」
みなさん、私が死んでもどうか悲しまないでください。
もし書けなくなっても嘆かないでください。
私はこの命の限り、愛し、書き、祈ったのだから、喜んで死んでいきましょう。
この本は、本当に寂聴さんの遺言そのものでした。
ご冥福をお祈り申し上げます。