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シパツウ - C-POWER通信

読書のススメ「わたしの全てのわたしたち」

 人にはそれぞれ、些細なことから大きなものまで様々な課題が存在します。
その課題を克服したり、目標を達成したりしながら、より良い幸せな人生を求めて生きています。

そんな皆様へお勧めしたい本をご紹介していきます。

「わたしの全てのわたしたち」  著者:サラ・クロッサン氏 最果タヒ 金原瑞人 訳

ふたりでひとり、ひとりがふたり。
いつも自分といっしょにいる自分がいる。
それでいて、いつもいっしょにいるのは他人で、その他人も自分。
生まれたときからそんなふうに生きてきたグレースが語る、自分とティッピの物語です。
グレースは、自分が、自分たちが坐骨結合双生児だということを「普通」だとは思っていない。
「普通は、才能」だと思っている。
なによりも、素晴らしい才能。
ギフトだ。
普通でない人間だけが、そのことを知っている。
ティッピといっしょに生きられて、わたしは幸せ。
心からそう言える。
そして、「たった一人で生まれて、たった一人で生きるなんて、リアリティがなさすぎる」と思う。
グレースは、ティッピにすべてを説明する必要がなかった。
考えすぎるほど考えて、すぐには感情を出せないグレース、常に人の気持ちを思いやる
グレースが、言葉にできなかった感情や思考。
それらが消えずに、残ったのは、息づいていたのは、ずっと隣でそれらを「共有」してくれたティッピがいてくれたから。
グレースは、グレースという存在の曖昧さを諦めることがなかった。
たとえ、自分をうまく語ることができなくても、はっきりとした答えを手にできなくても、それでも自らのわからなさ、曖昧さを忘れることがなかった。
簡略化しよう、はっきりさせようなんて思わない、焦らない、いつまでも考えて、「わたし」としての言葉を見つけていった、待ってくれているのはティッピだった。
彼女の言葉が「詩」として現れたのは、なによりティッピという存在が大きい、詩としてのグレースはいつもティッピとともにいた。
しかし、自分が死ぬかティッピが死ぬかという状況が生まれてしまう。
そしてグレースは思う。
「選べる未来なんてない」と。
未来を選べないグレースとティッピは、結局、何を選ぶのか。
グレースの思考・感性に触れ、感動と涙で読みほしました。

ひとりの人間になるということや、誰かを心から愛するというのはどういうことなのかを深く考える時間になりました。