クリパラボでは7月から、
マンスリーアワードを開催しています。
1か月に1度、
優れた研究を行った研究員を表彰しています。
今回は7月にマンスリーアワードを受賞した伊藤一浩さんの研究内容をご紹介します。
普段、動かしにくい腕の代わりに、足で筆を持ち、
大きな絵手紙を描く作家の伊藤一浩さん。
そんな一浩さんが今回掲げた研究テーマは
「10年ぶりにひとりで歩く」
研究内容を示す画像とともに、
職員視点から見た一浩さんのストーリーをご覧ください。
【どこまでもこの足で】
歩く機会を増やしたいという、
一浩さんからの相談を受けた時
職員としては、これからの健康のことを考えるならばとてもよいことだと、
喜んで応援したい内容だと感じた。
ただ、どうしてそんなにも歩きたいと思ったのだろうと、
素朴に疑問を持った。
「どうして、いま、歩きたいと感じているんですか?」
この質問に、一浩さんは、ゆっくりと目を細めた。
「昔は、自分で行きたいところへ、行けていたんです」
車椅子に乗ってそう語る一浩さんの表情は懐かしさと一抹の寂しさと、
今からやるぞ、という感情がない交ぜになっていた。
十年くらい前は、自分で歩いていたという。
しかし、最近は歩く機会が減っていた。
気が付いたら、
いつの間にか、
クリパラボの中では介助を受けて歩くことが当たり前になりつつあった。
そんな状況を打破したい。
かつてのように、自分の意志で。
行きたいところへ、行けるように。
そう思った一浩さんは、
6月頃、
自ら職員に提案し、
トレーニングを開始。
クリパラボから、近くのコンビニまで、
介助を受けながらも長時間歩いて昼食を買いに行き、
天気が悪い時は室内の平らな場所で、一浩さん単独で歩く練習をした。
汗を流しながら笑って歩き。
尻もちをついてもほがらかに。
少しずつ、少しずつ、
取り戻していくかのように、足を前に出していく。
昨日よりも今日。
今日よりも明日。
努力を継続していく一浩さんの歩く時の姿勢は、
どんどん安定していった。
まだ、完全に一人で移動はできないかもしれない。
目的は、達成できていないかもしれない。
だとしても。
明るく明日に向かい続ける姿勢に感銘を受けた。